民泊新法は他2つの法律と違い、行政に届出するだけで、民泊運営を開始できる少し特殊な許可法です。
許可や認可が必要ないため、比較的素早く始められるため、7月に控える東京オリンピックに向けて開業するならばうってつけの許可法になっています。
この記事を開いてくださった民泊オーナーの方々の中にも、オリンピック需要を狙っている方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、いくら届出だけといえど行政による検査はありますし、届出書と一緒に提出しなければならない添付書類もたくさんあります。
何も知らない状態で届出に臨めば、絶対どこかで詰まります。
書類集めや検査を少しでも楽にクリアするために、予め予習しておくことは必須です。
なので、この記事では民泊オーナーになる方々のサポートするために民泊新法の届出のフローや必要な書類、民泊開業までにどれくらいの期間が必要なのかについてお話していきます。
これから民泊新法で運営していくという方はぜひお読みになって、計画的に民泊を始められるように参考にしてみてください。
目次
民泊新法とは?
民泊新法(住宅宿泊事業法)は2018年6月に施行された、民泊系の法律の中で1番新しい法律です。
申請方法が「届出」なので、旅館業法や特区民泊のように行政の承認を得る必要はありません。
端的に言えば、
「これからこの物件で民泊をやりますよ!」
と申し出るだけでいいのです。
もちろん、保健所の立ち入り検査やある程度の規定はありますが、3つある民泊関連の法律の中では1番ハードルの低い法律となっています。
ただ、お手軽な分、制約も存在しており、民泊新法下では年間180日の営業しかできません。
365日運営できる旅館業法と比べると、稼働できる日数が違うため売上や収益が半減してしまうことがネックです。
なので、この届出だけでやっていくのではなく、旅館業法や特区民泊のつなぎとして届出を行う方が多いです。
民泊新法の届出の際に頭に入れておきたい2つの義務
民泊新法の大まかな概要をお話したところで、次は届出をする際に覚えておいていただきたいことを2つご紹介します。
これらを知っておくことで、途中で申請が滞ることなく進めることが可能です。
初めて民泊を運営しようという方は特に躓きやすいところなので、ぜひお読みになって、頭に入れておいてください。
家主不在型の場合、民泊管理業者への委託は必須
民泊新法下の運用方法は2つあり、それぞれ「家主居住型」と「家主不在型」と呼ばれています。
「家主居住型」は民泊に家主が居住している方式です。
空いた部屋の一室を貸している、または緊急時対応のために家主が住み込みしているなどがこれに当たります。
イメージ的にはホームステイに近い形です。
対して「家主不在型」は民泊に家主が住んでおらず、離れたところから駆け付け対応を行う形式を言います。
世間一般的の「民泊」のイメージはこちらの方が当てはまります。
家主居住型であれば、民泊に住んでいる分、トラブル対応もスピーディに行うことができますが、不在型の場合は離れた場所からの対応なので、素早く対処することができません。
なので、少しでもスピーディなトラブル解決を徹底するため、不在型の民泊は運営代行などの住宅宿泊管理業者に委託することが義務付けられています。
このことを知らないと、届出書を提出する最中に管理業者を探す羽目になってしまうので、事前にどの業者に委託するかを決めておきましょう。
また、新法の届出自体を管理業者に任せてしまうのも1つの手です。
民泊開業の際に周辺住民への周知が必要
仮に届出が終わり、立ち入り検査でOKが出ても、すぐに民泊を開業できるわけではありません。
住宅宿泊事業者、つまり民泊オーナーの方々には、民泊を開業することを近隣住民に周知する義務があります。
従来は民泊オーナーや管理業者の連絡先が書かれた書面をポストに投函するだけでも十分でしたが、大阪市が住民説明会を義務付けたことで周知方法が厳重になりました。
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なので民泊開業を周知する際は、必ず地域の行政に問い合わせをして、それに遵守した周知を行うようにしましょう。
民泊新法の届出条件となる2つの要件
民泊新法で届出する際の2つの義務は覚えていただけましたでしょうか?
頭に入れていただいたところで、民泊新法の準備を着々と進めていきましょう。
まずは民泊新法の2つの要件について確認していきます。
要件というのは、届出をする際にクリアしなければならない物件の条件のことです。
民泊新法では、
- 設備要件
- 居住要件
の2つがあります。
そこまで難しい条件ではありませんが、もしかしたらクリアできていないことを有り得ますので、ぜひご自身の物件と照らし合わせながら読み進めてみてください。
設備要件
必要な設備
民泊新法下で最低限必要な設備は「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」です。
この4つがあれば、民泊新法の届出をする資格があるということです。
一般的なマンション、戸建てであればまずないということはありませんよね。
また、これらの設備は1棟の建物内にある必要はありません。
届出者には、同一敷地内の建物を一体的に使用する権限があり、複数棟の建物に設けられた各設備が使用可能であれば、1つの「住宅」として届け出ることができます。
公衆浴場などでの代替は可能?
届出をしようとしている方々の中には、住宅内に浴室はないけど近隣に公衆浴場があるからそれを代替として申請をしたいと方もいらっしゃるかもしれません。
確かに旅館業法では、そのような施設を代替にできるのですが、民泊新法ではできません。
必ず届出する住宅の敷地内に浴室がある必要があります。
ユニットバス、シャワールームでの代替はOK
公衆浴場はNGですが、ユニットバスやシャワールームといった浴室での申請は可能です。
決して浴槽が必要というわけではなく、体を洗えて清潔を保てる設備があればいいということですね。
居住要件
居住条件は次の3つのうち、どれか1つの条件に当てはまれば届出を行うことができます。
- 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
- 入居者の募集が行われている家屋
- 随時その所有者、賃貸人又は転借人の居住の用に供されている家屋
要するに、人がすぐに生活できる状態を保っている住宅、または現に人が住んでいる住宅でのみ新法の届出が可能だということです。
空き家や売却中の住宅では民泊新法の届出はできません。
買収するか、人が住めるような状態に改善していく必要がありますのでご注意ください。
民泊新法の届出の流れ
設備要件と居住要件をクリアして初めて、届出のスタートラインに立つことができます。
あなたの物件は大丈夫でしたでしょうか。
大丈夫だった方々はいよいよ届出を本格的に始められます。
流れの中で改めて確認しなければならない事項についてもお話していきますので、確認をしながらお読みください。
また、この記事では個人における届出の流れをご紹介しています。
法人の方々とは手順や必要書類が異なりますので、予めご了承ください。
届出前に民泊新法で運営できるかを確認!
この段階で、先ほど確認した2つの要件の他に、あと3つの条件を確認しなければなりません。
- 1.大家が民泊での賃借、転借を承諾しているかを確認する
- 2.マンション管理規約によって民泊が禁止されていないかを確認する
- 3.消防庁から「消防法令適合通知書」を入手する
いずれも民泊の合法性を保つために必要な事項ですので、必ず確認するようにしましょう。
大家が民泊での賃借、転借を承諾しているかを確認
あなたが物件を借りて民泊をしようとしている場合、物件の大家さんに民泊をしていいかを確認する必要があります。
何故なら、民泊は宿泊客に部屋を"貸す"ビジネスですので、借家を民泊にすると転借にあたるからです。
あなたから大家さんへの家賃の支払いはあれど、民泊の収益はすべてあなたのものになってしまうため、借家での民泊を快く思っていない人も少なくありません。
なので、民泊をやっていいかどうか、1度確認する必要があるわけです。
もし大家さんが承諾せずに民泊をした場合、運営禁止になりかねませんのでご注意ください。
また、届出をする際、大家さんの承諾照明書が必要になりますので、必ず作ってもらうようにしましょう。
マンション管理規約で民泊が禁止されていないかを確認
あなたがマンションの一室で民泊を行う場合、そのマンションの管理規約に「民泊禁止」と書かれていないことを確認してください。
民泊禁止だった場合はマンションの管理組合によって運営禁止にさせる恐れがあります。
この際も管理組合に民泊を禁止にする意思がないという証明書を貰う必要があります。
消防署から「消防法令適合通知書」を入手
民泊を運営するには、宿泊客が安全に滞在するために消防機器の設置は必須です。
大家さん、またはマンションの管理組合からの承諾が出たら、消防署の指示に従い、消防設備を整えましょう。
無事消防署のOKが出たら、「消防法令適合通知書」という書類を貰えます。
この書類も届出に必要になりますので、大事に保管しておきましょう。
届出に必要な書類をすべて集めて行政に提出
上記の3つの書類を含めた届出書と添付書類を集め終わったら、いよいよい保健所に届出です。
必要な書類についてはこの届出の流れの後にお話していますので、そのまま読み進めてみてください。
施設の立ち入り検査
保健所に届出した後、保健所による立ち入り検査が行われます。
改めて、あなたの物件が要件を満たしているかどうか、消防設備が万全かどうかをチェックされます。
ここまでくれば民泊運営は目前です。
運営開始
立ち入り検査をクリアすれば、あなたの届出は無事受理され、民泊の運営が可能になります。
届出の資料集めから運営開始までの期間は個人で全て用意するとなると大体1か月ほどが目安です。
もし住宅宿泊管理業者のサポートを受けて届出をするなら大体2週間ほどで完了します。
届出に慣れている管理業者を利用することで期間を短縮できますので、不在型で民泊を運営する際は必ず利用するようにしましょう。
民泊新法の必要書類と入手する場所
民泊新法の届出の流れについてお話しました。
- 届出前の確認事項
- 必要書類集め
- 立ち入り検査
届出はこの3つの段階から成っています。
非常にシンプルで覚えやすく、届出しやすいように思えますが、民泊新法で1番苦労するのが必要書類集めです。
何故なら提出しなければならない書類が非常に膨大だからです。
個人での届出の場合に必要になる書類一覧
- 届出書
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
- 欠格事由に該当しないことを誓約する書面
- 住宅の登記事項証明書
- 住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合は、入居者募集の広告その他それを証する書類
- 「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証する書類
- 住宅の図面(各設備の位置、間取り及び入口、階、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積)
- 賃借人、転借人の場合、賃貸人が承諾したことを証する書類
- 転借人の場合、賃貸人及び転貸人が承諾したことを証する書類
- 区分所有の建物の場合、規約の写し
- 規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類
- 委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し
届出書を含めて12種類の書類を集める必要があり、非常に骨が折れます。
なので、ここで書類の詳細や入手場所について解説して、皆さんの書類集めを少しでも楽できればと思います。
ぜひ参考にしてみてください。
1.届出書
各自治体の保健所やHPから入手することができる、絶対に欠かせない書類です。
記入事項は主に5つです。
- 氏名、住所及び連絡先
- 住宅に関する事項
- 営業所又は事務所に関する事項
- 住宅宿泊管理業務の委託に関する事項(住宅管理業務に委託する場合)
- その他の管理組合から禁止する旨がないこと、賃借人・転借人が該当するか否かなどのチェック事項
個人での届出の場合はこの5つの事項を記入しておけば届出を行うことができます。
詳細は実際の届出書の様式を載せておきますので、こちらからご確認ください。
2.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
その名の通り、破産手続をして、まだ復権していない人間ではありませんということを証明するための書類です。
後述する欠格事由に該当しないことを証明するために必要な書類の1つで、あなたの本籍地の役所に問い合わせることで入手することができます。
こちらは3か月以内に発行したもののみ有効なので、予めご注意ください。
3.欠格事由に該当しないことを誓約する書面
民泊新法の欠格事由に該当せず、クリーンな民泊運営が可能であることを誓約する書類になります。
欠格事由は以下の7つになります。
欠格事由
- 心身の故障により住宅宿泊事業を的確に遂行することができない者として国土交通省令・厚生労働省令で定めるもの
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 住宅宿泊事業の廃止を命ぜられ、その命令の日から3年を経過しない者
- 禁錮以上の刑に処され、又はこの法律若しくは旅館業法の規定により罰金の刑に処され、その執行を終わり、又は執行をうけることがなくなった日から起算して3年を経過しない者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が[1]から[5]のいずれかに該当するもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
こちらは「民泊制度ポータルサイト」からダウンロードすることが可能です。
個人事業の場合、「誓約書(個人)」という書面をダウンロードして記入を行ってください。
4.住宅の登記事項証明書
民泊を運営する予定の住宅の権利関係を行政に明らかにするものです。
こちらは法務省に問い合わせることで入手することができます。
5.住宅が「入居者の募集が行われている家屋」を証する書類
前の章でもお話した居住要件の1つ「入居者の募集が行われている家屋」であることを証明するための書類です。
この要件に該当しなければ用意する必要はありません。
入居者募集の広告の他にも、賃貸不動産情報サイトの掲載情報の写しなどでも代用できます。
6.「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」を証する書類
こちらも居住要件の1つを証明する書類です。
要件に当てはまらない場合は用意する必要はありません。
「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」とは、年1回は利用している別荘やセカンドハウスのことを指します。
なので書類を用意する際は、住宅付近で買い物をしたときのレシートや自宅間の往復料金の領収書などが好ましいです。
7.住宅の図面
文字通り住宅の図面です。
届出書の次に重要な書類になります。
この図面を見てから本当に民泊ができる住宅なのかを判断し、立ち入り検査に来るわけですからね。
なので、配置図や立面図、平面図などできる限り詳しい図面を用意しましょう。
これらは不動産会社や建築士に頼むことで入手することができます。
8.賃借人、転借人の場合、大家が承諾したことを証する書類
先ほどもお話した大家さんが民泊運営を承諾を得たという証明書です。
1度申し上げた通り、民泊は宿泊客に部屋を"貸す"という仕様上、転借の扱いになりますので、必ず大家さんの了承を得るようにしてください。
9.(区分所有の建物の場合)規約の写し
区分所有の建物とは、マンションやアパートのような分譲物件のことです。
このような物件には必ず管理規約があり、そこには民泊を運営の可否が書かれています。
役所にはその写しを提出する必要があります。
10.管理組合に禁止する意思がないことを証する書類
もしマンション管理規約に民泊の可否に関する記述がなかった場合はマンションの管理組合に直接問い合わせて、禁止にする意思がないことを確認する必要があります。
その際に作成した証明書も一緒に提出します。
11.管理業者から交付された書面の写し
不在型の民泊を営む場合に必須になる民泊管理業者との契約書です。
提出することで、管理業者と契約を結んだことを証明しなければなりません。
「民泊制度ポータルサイト」にフォーマットがありますので、そちらを利用することをオススメします。
もし届出が面倒ならBCMにご相談ください!
ここまで民泊新法の流れや必要書類の入手方法、そして必ず守らなければならない義務と要件についてお話してきました。
これらの内容を網羅しておけば、手続きの際に詰まることはありません。
ぜひ当記事を参考に、手続きや書類集めを進めていってください。
しかし、手順などが分かっていても面倒なのは変わりありません。
もし自分の手で進めたくないと思った方はぜひBCMにご利用ください。
手続きや書類集め、運営に至るまで弊社がワンストップでサポートします。